ジャーナルJournal

Journal Vol.10

いたばし生花店

男性が準備に忙しく、付き合いが過ぎるところは問題。
でも、一本筋が通っているところは認めて応援しています。

女性を中心とした若い世代の賑やかな声が響く「いたばし生花店」。皆でおしゃべりに興じられる空間に、カフェとはまた違ったなんとも居心地の良さがあります。「いたばし生花店」に古川町在住の20~40代の女性たちに集まってもらい、女性の目から見た古川祭についてお話いただきました。

数十年前まで、古川祭での女性の仕事は「呼び引き」といって、お客さまに料理と酒を提供してもてなす習わしがありました。いまその風習が少なくなったとはいえ、男性中心に物事が進められる古川祭を、20~40代の女性たちはどう受け止めているのでしょうか?

「私は結婚して古川に来た人間なので、第三者から見ると古川祭は「かっこいいお祭り」という認識です。お祭りの2日間だけは、男性も女性も高揚していて、なんともいえないほわっとした空気が町全体に流れている感じがします。」

「私の場合は生まれも育ちも古川なので、通しで祭りを見に行くというよりは、知り合いが起し太鼓の上打ちをやるときに見に行く感じですね。どの組がどこから出発するか、タイムスケジュールが出るので、先回りして応援に行きます。初めて見る人には、4つの組が集まって起し太鼓がスタートする「打ち出し」が、見ごたえがあっておすすめです。」

「呼び引きがないので、女性たちは声がかかれば行列の人足(にんそく)には出ますけど、そうでなければ、夫を送り出して、見に行く人は行くという感じじゃないでしょうか。」

「古川祭って、当日よりもそれまでの準備に男性陣は時間をとられるんですよね。年間通して集まりがあったり、3月の抽籤会後は毎日のように会議があったりして。会議のときには必ずお酒を飲んで帰ってくるので「本当に会議しているの?」と、疑ってしまうこともあります(苦笑)。」

「古川では当たり前だけど、主事だと当番が回ってきたりしてすごく忙しくなるから、お嫁に来た人は考えられないかもしれないですね。その時期は夫が不在の状態が続くので、理解できない人もいると思いますよ。」

「同じ町内でもお祭りの組織が複数あるケースもあって、声をかけられたものすべてにかかわっている人もいますよね。好きでやっている人はいいんですけど……。仕事も家庭もあって祭りもとなると、上手にこなせない人は大変だと思います。」

「一方で、祭り自体の熱量はすごいですよね。傍から見ると、起し太鼓って、ただ「わーっ」と騒いでいるだけに見えるかもしれませんけど、やっている側はものすごいプレッシャーを感じながら挑んでいて。例えば付け太鼓の長になったときに、タイミングが違ったりするだけで、周囲にずっと言われ続けたりもしますから。私も結婚して男性たちの本気度やプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも取り組んでいる姿を知って、お祭りの見方が変わりました。」

「確かに、飲んで好き勝手にやっているように見えるけど、係とか長になってくると、神経質になりますね。夫が当番になったときには、会議後の飲み会も「飲むのも大事だけど、仕事もあるでしょ」って、わりと早く帰らせるようにしていたようです。それまでは飲んで夜中の2時、3時に帰ってきていたので、翌日の仕事がきつそうでした。」

「私は嫁いできた人間ですし、古川祭に参加するエリアの人間ではないので見に行くだけなんですけど、古川祭は素直に素晴らしいお祭りだと感じています。起し太鼓もただ「わー」っとやっているように見えても、誇りがあるんですよね。参加している人全員が、お祭りが神事や奉納であることを理解していることって、現代のお祭りでは少ないように思うんです。各組でこだわりを持ってそれぞれの役に徹してる姿は、一本筋が通っていると思います。」

「私はもうお祭りを通しで見ることはないですけど、お祭りの2日間だけは、起きて夫の帰りを待つようになりました。最近は終わるのが早まったので帰りも早くなったんですけど、昔は夜中の2時に終わったりしていたので帰宅が遅かったんです。それでも、この日くらいは起きて待っていてあげようって。それはやっぱり、がんばっている姿を見ているからですね。」

男性たちの様子や人口が減っている現状を、温かい目で見守って応援する古川の女性たち。古川祭が滞りなく行われるのも、彼女たちの日常のサポートがあってこそ。そう実感した現場でした。

ライター:干川美奈子 撮影:早坂直人[Y's C]

いたばし生花店

生花だけでなく、センスの良いドライフラワーや観葉植物、花周りのインテリア用品などを揃えたフラワーショップ。月に何度か開催する、自由に花を使って作品作りをするワークショップも人気。古川祭前後から夏にかけては、古川町にある牧場「牧成舎(ぼくせいしゃ)」の「もなかアイス」を販売。「オーブントースターで焼いて食べる新感覚アイスで、食べ歩きに最適です」(板橋さん)。

いたばし生花店スタッフ
板橋 智子(いたばし ともこ)さん
南茂 巴(なんも ともえ)さん
宇津宮 里枝(うつみや りえ)さん

<いたばし生花店スタッフがおすすめする 飛騨や古川ガイド>
池ヶ原湿原
冬は閉鎖していますが、季節を通して違う表情が見えます。公共交通機関が通っていないので、車で運転していかないといけません。クマが出ることもあるので、行ったことがある人と行った方がいいかもしれません。(板橋さん)
安峰山
車で10分くらい、歩いて1時間半くらいの山です。展望台があって、古川の町を見下ろせます。(南茂さん)
壱之町珈琲店
Fab café HIDA
2つとも居心地の良いカフェです。(宇津宮さん)
トマトラーメン ~HIRO’~
地元のトマトを使ったトマトラーメン、おいしいです。(板橋さん)