ジャーナルJournal

Journal Vol.4

菅沼 洋平さん 沼田 和輝さん(青龍臺青年部)

小さな町でも、
祭りがなかったら仲良くならなかった。

青龍臺(せいりゅうたい)の見どころの一つが、からくり人形の奉納です。古川町の酒蔵・渡辺酒造店に勤務する菅沼洋平さんと消防士の沼田和輝さんは、青龍台組青年部会のほか、からくりを動かす青龍台木偶(でく)保存会にも所属しています。

意外とタイミングに躊躇する!?「トンボ」披露の思い出

菅沼:僕が起こし太鼓に参加したのは23歳のときです。そこから毎年出てますから、今年で16年目になります。

沼田:僕は生まれも育ちも古川で、社会人になったら男祭(起こし太鼓)に出るんだってずっと思っていて、消防士になった20歳から参加させてもらって、今年で4年目になりますね。
菅沼:沼田とは年が15歳も離れているんですけど、祭りでも頼りになる存在なんですよ。
起し太鼓が始まる前に、太鼓を持って町内を練り歩くんです。そのときに付け太鼓の棒によじ登る「トンボ」という技があって、ポイントポイントで男たちが披露するんですけど、かなり体力を使う技なんですよね。だから広場とか自分の家の前とか、見ている人が多いポイントに来るまで体力を温存する人も多いんです。でも沼田は若いし鍛えているから、何度でもすごくきれいなトンボができる。
沼田:ありがとうございます。社会人になって初めて夜の祭りに参加したときに、自宅前でトンボをやらせてもらいました。お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんに見てもらえたのが、僕の祭りの一番の思い出です。僕は古川祭が大好きで、子どもの頃から参加していましたけど、やっと男祭に参加できたという思いもあって、感激でした。若手だし出しゃばってはいけないと躊躇していると、洋平君が「やれっ」て背中を押してくれるので、自信を持って上らせてもらっています。

写真提供:菅沼洋平

菅沼:僕も初めて祭りに出たときに、勇気がなくてなかなかトンボができなかったんです。そしたら6歳上の兄が、「お前、早く行けよ」って、お尻を蹴ってきて。それで「えいや」って挑戦して、成功したときの感動は忘れられません。だから「やりたいやつはどんどんやればいい」って思うんです。若い人たちがやってくれれば会場も盛り上がりますからね。
沼田:お酒が入っていることもあって、トンボをやろうとしても上に登れない人もいます。そんなときは誰かが下から押してあげて上るんですけど、毎年、一人、二人は落ちる人が出ますよね。
菅沼:下に人のクッションがあるから、そこに落ちれば大けがにはならないけどね。僕も毎正月には「今年は鍛えよう」って誓うけど、結局なにもやらずに祭りを迎えているから、気を付けないとなぁ。
沼田:次の目標は太鼓の上に乗ることです。
菅沼:僕が乗ったのは35歳のときでした。4年に1度回ってくるときに、町内で祭りに対する貢献度を見ている上の人たちがいて誰が打つかを決めます。選ばれたら名誉だけど、何回名前が挙がってもなかなか選ばれない人もいます。沼田みたいにがんばっている奴は、一回で選ばれるように推薦したいですね。

祭りがなかったら、つながらなかった人たち

菅沼:木偶保存会に入ったのは10年前です。小学生の頃からの憧れでした。公民館で小学生がお囃子の練習をしていると、大人たちが二階でからくりの組み立てとか練習を始めるんです。子どもはその階段も上がれなくて、神の領域くらいの雰囲気がありました。大人になったら動かせると思っていたら、木偶保存会に入らないと動かせないことが分かって、それで入らせてもらったんです。
沼田:僕はからくりに関わって今年で3年目です。昔から古川祭が大好きで、祭りに関わることならなんでも関わりたいと思っていたので加入しました。
菅沼:からくりは分解して保存しているから、祭りの10日前に公民館に運んで組み立てて、翌日から練習が始まるんです。1つのからくりを動かすのに、10人で糸を操るから、息を合わせるのが意外と難しいよね。

写真提供:菅沼洋平

沼田:一人でも失敗すると動きが悪くなるから、みんな緊張感を持って動かしていますね。奉納という意味合いだけでなく、多くの方に見てもらえるので、達成感もあります。
菅沼:屋台に動かす人全員が乗っているんですけど、下からだと人が見えないから、子どもの頃は、どうやって動かしているのか、本当に不思議だった。人が動かしているようには見えない自然な動きを、ぜひ見に来て欲しいですね。
沼田:僕は菅沼さんと同じ青年部と、ほかに子どもたちの囃子の指導もしています。年に1回、いろんな町内の人たちが集まって一つの行事をするっていうのは、いまの時代大切なことなんじゃないかって思っていまして。祭りを通して、年代の違う人たちと話すようになったり、人とのつながりができたり。

菅沼:確かに、同じ町内であってもしゃべったことがない人って結構いるんだよね。「あの辺に住んでいるあの人」くらいの認識しかなくて。祭りで一緒にならなかったら、沼田と飲むこともなかったと思う。一回り以上離れていますけど、後輩って思ったことはなくて、楽しいことを一緒にやるメンバー、仲間だと思っていますね。丁寧でしっかりしているけど、やんちゃするときにはするし。見ていてうらやましいです。
同じように、年上の方たちとの交流も増えました。面倒見のいい年上の方で、失敗したときにちゃんと指導して、次はこうしたほうがいいよって道筋を作ってくれる方がいるんですけど、見た目が少しだけ強面なんです。僕は町の有名人でもないので、祭りに参加することで、いろいろな年代の人とつながれたことは財産ですね。

ライター:干川美奈子 撮影:早坂直人[Y's C]

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